手書き文字の形について。 TOP
3、 『 線 』 の 『 形 』 と手の 『 動き 』 。 ( 毛筆で書かれた線の上下左右裏表 )
                  ( しんにゅう )の右払い、( 左払い )、( はね )の方向、等
                  ( 口 )( 田 )( 四 ) のように四角に囲んだ左右の縦画、
書の 『 線 』 は当然の事ながら書き進む 『 動き 』 から表れます。
この点、比較的おちいり易い部分を記 して見ました。


( 通 )の右払い、( しんにゅう )などの方向について
この終画右払いの線の最後を見ますと、下は右上方に向かっていますが上は右横に向かっています。これは筆を引き上げながら右横方へ向かうために出来る線で通常の右払いはこのように右横に払います。( えんにょう )や( そうにょう ) も同様で、( 大 )や( 文 )字なども同 じようにその最後の払い出す部分を右横に向かうと比較的きっちり した文字になります。
行書や草書のくずした文字で最後を上に払い出す事もありますが通常の形で右上にはね上げた形を見ることがあり、これは毛筆で書いた場合の下部線が右上方に向かっているように見えてしまうことからのものと考えられます。
( 舌 )の左払いの線も面白い形になります。
線の上は左下に向かっていますが下側は左横に向かい、二画目の横画と平行になっています。これは右下図のように左払いを左横に向かい遠回りに書いて横画に移ることでこのような線になります。
一般的に陥りやすい易い点は、一画目から二画目に移る際に直線で最短距離を通りやすいことでしょうか。
この遠回りに書くことを 『 遠勢(えんせい) 』 と呼んでいますが文字にゆったりとした余裕( )と伸びやかさを出すため極めて大切( )になります。
(千)(手)(受)字や(禾偏)などの左払い( )も同様です。


( 水 )は縦画の下部( はね )になります。
( はね )という表現はあまり好ましくなく、縦画を書き筆先を直しながら次の画に移るとき自然に出来る形になります。したがって( はね )が出来るときもあり出来ない場合もあります。
標準的な形は図のようにその下側が左上方に向かい上側は左横に向かっています。 このように書くというより、以下のような 『 動き 』 をする事で結果的に出来る形になります。
筆で書いた場合は縦画の下部で穂先を突き上げそのまま引き上げながら左横に向かい前記と同様に 『 遠勢 』 = 『 遠回り 』 で次の画に移ります。このような 『 動き 』 で書きますと伸びやかな文字になり、この( はね )の角度は内側が直角になるのが標準で鋭角になる程引き締まった感になります。
余談ながら、現在の小中学校教育では 『 糸・木・木偏・禾偏・など 』 は 『 はねない 』 で
『 小・手・手偏・など 』 を 『 はねる 』 事になっています。教える場合はその様でも生徒が書いた時にその文字を間違いにするような事はしたくないものです。
以下は、四角に囲んだ文字の左右の縦画の引き締め方になります。
四角に囲んだ文字で横長四角になる形は緊張感を出すためその下部で狭くして引き締めますが、( 四 )字は扁平な横長字形になる文字で、左右縦画をより下部で狭く引き締めています。そのような中で @ の始平公造像記は左右の縦画の外側を下で狭くし、内側はまっすぐ下に向かい横画との角度が直角になっています。
@ A B C D
北魏
始平公造像記
(498)
東晋・王羲之
 (321〜379)
澄清堂帖
唐・虞世南
(558〜638)
孔子廟堂碑
唐・歐陽詢
(557〜641)
九成宮醴泉銘
北宋・
(10 51〜1107)
方円庵記
   歐陽通
   道因法師碑
@ 荒っぽく野性的で唐代の楷書と比べますと未完で過渡期の書といえますが毛筆で書く面白さを表 しています。他の文字は上記 @ のようにはなっていませんが C 歐陽詢(おうようじゅん)九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)は少し @のような気分で書いているようにも見えます。また、同 じ四角( )に囲んだ文字の左図 ( 口 )( 右 )( 石 ) 字は左右縦画の外側( )だけで引き締めています。
画像は (日本書道資料株式会社・方圓庵記)
(二玄社・書源)、から掲載
歐陽詢
九成宮醴泉銘
歐陽詢
九成宮醴泉銘

リンク
目の錯覚を応用した形の( ウ冠 )
73、
( ウ冠 )の形に成る必然性と三つの図形。 また、その変化した字形。
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